レストラン 「ル・マンジュ・トゥー」

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谷 昇 氏

1952年東京都生まれ。六本木「イル・ド・フランス」で修業、’76〜77年渡仏。銀座「レンガ屋」、名古屋「白亜館」のシェフなどを経て、’89〜’90年に再びフランスへ。 アルザス「クロコディル」「シリンガー」をまわる。青山「サバス」と六本木「オー・シザーブル」のシェフを務める。途中、’94年に「ル・マンジュ・トゥー」のオーナーになり、’96年よりオーナーシェフに。2006年に店をリニューアル。翌年より『ミシュランガイド東京』で2ツ星を獲得。’12年、第3回辻静雄食文化賞・専門技術者賞を受賞。

「ドゥルイのビネガーは酸味が尖らず、まろやかな味なので、火を通さずにダイレクトに使用するサラダのヴィネグレットに向いていますね」

東京都新宿区納戸町22
電話 03-3268-5911
www.le-mange-tout.com

昼のコース 第1・3・5の土曜のみ 5800円
(料理売り上げの20%を東日本大震災の義援金とする)

夜のコース 1万2600円

日休

※ コース価格等のデータは取材時のものであり、変更の可能性もあります。また、掲載した料理は一例であり、常時提供されているものではありません。詳しくはお店におたずね下さい。

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凛とした潔さを感じるシンプルな仕立て。しかし、その味わいは・・・決して単純ではなく、むしろ言葉に表現するのが難しいほど、例えて言うならば、味蕾を開花させてくれるような味です。
写真の料理は「岩ガキとトマトのボンボン」。カキは200℃のオイルで素揚げし、冷蔵庫で急冷。提供前に網焼きにして香りを立たせています。
下に流したソースは、カキの殻の中の海水を少し薄めて、その中でカキをポッシェし(やさしくゆでて)、少量の生クリームと共にピューレにしたもの。
つまりソースもカキそのものなのです。

冬場のカキでも同様に提供しており、岩ガキよりも更に濃厚な味になるとのこと。きらめく球体のジュレは、トマトから出る透明のエッセンスを集め、ぐぐーっと濃縮し、ゼラチンを加えたもの。近年、スペインに端を発する凝固剤を使用したテクニックがレストラン業界で流行っていますが、「もっとナチュラルな方法でできるはず」と、考えた結果、冷やしたオイルにスポイトで落としてかためる、という技に至ったのだそう。

「器や盛りつけにはモードがありますが、テクニックは、新しいと思われることのたいていは古典や基礎技術の中にあるものなんです。それをどう引き出せるか。このテクニックも決して特別な方法ではないんですよ」(谷オーナーシェフ)

MG_5596ル・マンジュ・トゥーは、古くからの町名が未だ多く残る界隈の一角、新宿区納戸町にあります。古い一軒家の店を1994年に入手、’96年よりオーナーシェフとして厨房に立ち、10年後の2006年に全面リニューアル。1階が厨房、2階が14席のダイニング、とてもこじんまりとした、けれどもモノトーンでスタイリッシュなレストランです。
メニュー表はなく、おまかせの1コース。少しずつ色々な料理を味わいたいというニーズに合わせ、前菜が多めの構成ですが、その日の食材等により計6〜8皿と異なり、また、初来店かリピーターか、あるいは選ぶワインによって等、同じ日でも席によっては料理の内容や提供される順番が変わることも。

もろちん、アレルギーや苦手な素材を事前に伝えておけば考慮してもらえますが、谷シェフが得意としている料理は、トリュフ、フォワ・グラ、仔羊、カエル、鳩、ウサギ、ジビエなど、これぞフランスの美食といったもの。

例えばカエルなら、まず塩を振って置き、次にヴェルモット酒と小麦粉を加え混ぜ、にんにく風味のオイルでマリネしてから焼く、といった、下ごしらえを入念に行うことで、臭みはなく、ふっくらもっちりとした食感と旨味が引き出されています。食わず嫌いせず、新たな味蕾を開花させてみてはいかがでしょう。